2013年3月13日水曜日

東海大学建築会卒業設計審査会の議事録と審査員講評

東海大学建築会が主催する、東海大学卒業設計賞2013が湘南キャンパス17号館2階ネクサスホールにて、参加総数31作品により開催された。
学部との日程調整により、惜しくも平日での開催となったためOBの参加は見込めなかったが、会場はおおくの学生で賑わいをみせた。

総勢31作品の読み込み
審査委員が会場内を巡回し、すべての作品を2時間半を掛け、参加学生に質疑を与えひとりずつ丁寧に全作品が読み込まれた。空調の利きが乏しいホール内での長時間の待機は参加学生にとっては苦い体験ではあったが、自作に対する先輩建築家の生の声を聞くことの出来た貴重な時間であったはずである。

公開による1次審査
4人の審査員は各々5票を受け持ち作品に投票をした。
投票は会場正面に設けられた採点表に各審査員が直接マークする方式によって行われ、会場内の参加者は固唾を飲み投票状況を見守った。
31作品中13作品に票が入り、内6作品は複数票を獲得したため自動的に通過が決定した。残り7作品に対しては、獲得票が1票であったため2次に繰り上げるかの審議が審査員によって審議された。
「清水佑基さんの崩しを用いた建築学外に飛び出した新宿こども美術室」は閉鎖環境における美術教育のあり方に疑問視を向け、美術室というキーワードをもって、既存のプログラムから抽出し、まちに開放するかたちで新たな教育環境を提案し、さらに地域と学校のハブ装置として置き換えた点が評価され、唯一獲得票1票の中から2次へと進出した。

通過作品によるプレゼンテーションによる2次審査
15分の休憩の後、通過学生によるプレゼンテーション及び審査員の質疑に対す応答による審議が行われる。会場前方に通過作品を並べ、各学生は自身の作品の前に立って審査員にアピールする時間が与えられた。
学生によるプレゼンテーションは、前日の学内での審議による疲れによりやや疲れ気味の学生や、作品提出後の日が浅い為かまとまりに欠けるものも見受けられたが、なかには自身の作品を積極的にアピールにし、審査員の質疑が活発なものも見受けられた。質疑応答に関しては審査委員長の岸本氏による明らかに挑発的なリードによって進められ、四苦八苦する学生のフォローをその他の審査員が受け持つといった図式が始終垣間見られた。また「コントロールよりも暴投」「自閉症」「社会性」といったキーワードを使って卒業設計を通して垣間見られる現在の学生のウイークポイントが討論され、ともすると駄目だし会に陥りがちな卒業設計審査会の枠を超え、これから社会に船出する後輩への愛情の感じられる清々しい討論会であった。

最優秀賞、優秀賞を決定する投票
各審査員は金1票、銀2票のマークを通過者に対して投票、
結果1次審査では最多の3票で通過し、金を2票を獲得した「渡邊健太さんの渋谷積層小学校こどものイエ×マチ」が最優秀に満場一致で選出された。案は都心部における小学校の遊び場の縮小問題を高層化することによって生まれた空地を公園として開放することで問題解決を図った意欲作である。模型をみる限りではやや未完成感はあったが、通常低層ボリュームによって計画される小学校というプログラムに対し敢えて高層階に組み直すことによって生まれる新鮮なイメージが高く評価された。

優秀賞2点の選定
スムーズに決定した最優秀に反して次点となる優秀賞は5作品が肩を並べた。
それぞれの作品に投票した審査員の援護射撃に対して反論する審査員による討論の後、審査員が2票を投じる決選投票が行われ、まず4票を獲得した板部さんの作品が、追って大越さんの作品が優秀賞に選出された。
「板部奈津希さんの故郷 甘木んコアば再構築します。まちの重心をつなぐアマギの杜」は車社会の弊害により街が希薄化するという地方都市に見られがちな現象を市民が集い易い公園化した市民プラザを設置することで食い止めようとする計画。審査においては、綿密なサーベイにそぐわないフェミニンで曖昧な建築表現が審査員の共感を得られず、最優秀賞には届かなかった。
「大越菜央さんのじいちゃんが障がいを教えてくれた光のグラデーションが作り出す生活の秩序」網膜色素変性症という祖父の障害に着目し、祖父と孫という関係性に捕われない観察眼や丁寧なスタディを蓄積した点が決めてとなり、優秀賞に選出された。

以下は残った3作品の紹介
岸田賢人さん 空白の次項 社会復帰施設としての刑務所
既存の低層プログラムを高層化することによるアプローチは、最優秀賞の渡邊案とこの作品であったが、留置所というやや共感を得難い題材設定と高層化によって生まれた垂直の塀との間に生まれた余白のみの扱いで始終してしまった非常に残念な力作。
高橋瑛大さん 最小限居住 現代社会を疑う空間のものさし
その小ささ故に、台形断面を回転させることで座して半畳、寝て一畳、回って4畳と様々な姿勢が得られるというユニークな発見で最小限の空間をあつかった作品。原寸の模型も秀逸であった。が、皆がこの作品に抱いた装置の発展形を作者自身が抱けず、最後まで最小空間ということばに縛られすぎてしまった点が非常に残念。
石川雄斗さん 駿河工芸センター 都市と文化を繋ぐ格子建築
最後の最後で賞からはこぼれてしまったが、唯一構造計画まで思考され、完成度という点においては他からは抜きん出た安定感のある作品であった。結果としてその安定感が逆に仇となり、完成に導く道中にこぼれてしまった、ヒトの視点による内部空間の未熟さを審査員に見抜かれてしまった。

最優秀賞 渡邊健太 渋谷積層小学校 ~こどものイエ×マチ~

優秀賞 板部奈津希 故郷 甘木んコアば再構築します。~まちの重心をつなぐアマギの杜~

優秀賞 大越菜央 じいちゃんが障がいを教えてくれた。~光のグラデ-ションが作り出す生活の秩序~

以下より審査員の講評文と審査表のPDFをダウンロード頂けます。

審査員長 岸本和彦 講評文
http://www.tokai-arch.org/news/kd13kishi.pdf

審査員 白子秀隆・井上玄 講評文
http://www.tokai-arch.org/news/kd13shiino.pdf

審査表
http://www.tokai-arch.org/news/kd13hyou.pdf


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来年度の東海大学建築会卒業設計審査会の告知及び報告はarchireed(アーキリード)のウェブサイトにて掲載します。尚、ウェブサイトは3月末に開設の予定です。開設時にはこのページでお知らせさせて頂きます。

background image: 湘南キャンパス H棟 Photograph: © GEN INOUE 23rd June, 2012