2014年2月9日日曜日

東海大学建築会卒業設計審査会のレポート

一次審査の様子

去る2月1日(土)に東海大学建築会卒業設計賞の審査会を開催致しました。
当審査会は、建築会により、東海大学建築学科出身の現役建築家を審査員として任命し2段階方式の公開審査によって最優秀賞1点、優秀賞2点を選出しております。今年度は会場撤収の関係で時間を例年より前倒しにして行われました。にも関わらず多くの学生が集合時間の朝9時15分から参加してくれました。

全作品の読み込み
開会式と審査員の紹介の後、審査員の個別による全ての作品(31作品)読み込むため会場をおおよそ2時間半で巡回します。空調の利かない会場にも関わらず審査員の4名はひとりひとりの学生との質疑応答を交え、1次審査への通過作品を吟味していきます。1作品に付き5分程度の短い時間ではありますが、学生にとっては集大成である卒業設計を現役の建築家に触れて頂ける貴重な時間であり、また審査をする側にとっては当日最も神経を使うシビアな時間であります。

1次審査
4名の審査員がそれぞれ5票を受け持ち、会場に貼り出された得点表に投票していきます。この時点において基本的には複数票を得た作品を通過作品として選出していきます。今年度は作品の偏りが見受けられたため、票の入った10作品を2次審査への通過といたしました。結果は以下の通り
1 金子 知愛 ロジをぬけたら、、 裏で繋ぐどぶ板通り/3票
2 土方 拓海 よくあそび。よくまなぶ。 ~遊びから育む幼稚園~/2票
3 北島 圭 日常に異文化を ~ヴォイドで出会う鎌倉の『食』からの交流~/1票
4 山中 健裕 0(ゼロ)ー恢復の布石  〜こどもと育む、「場」の創発的石巻再生デザイン〜/3票
5 三木 友親 町工場を町に近づける 〜西淀川を作り直すまち工場路地〜/3票
6 小松 祐太 いのちをつなぐ建築 ~ジンギでつなぐ瀬戸内祝島練り塀みち自然小学校~/1票
7 半田 千尋 接地性のある建築 〜気配でつなぐ多層サテライトキャンパス〜/3票
8 白井 由惟 旧姫街道を取り戻せ!〜まちと観光客をつなぐ豊川メディアウォーク〜/1票
9 野川 栞里 長岡駅前大雁木広場 ~大手通り商店街おもてなし生産拠点化計画~/2票
10 野地 祐介 時を繋ぐ町並み ヒストリースケープの構築/1票

半田案の二次審査の様子

2次審査
15分間の休憩の後、10名の通過者に各5分程度の作品アピール時間が与えられました。作品に投票した審査員はその理由とともに援護射撃を、投票を控えた審査員はその理由をもとに攻撃をといった具合の攻防戦が2時間以上行われます。審査員との議論の最中に新たに浮き上がった点やもしや本人すら気づいていなかった側面等を加味しながら、各審査員が金1票、銀2票を投じた結果 、半田 千尋 接地性のある建築 〜気配でつなぐ多層サテライトキャンパス〜が金2票、銀1票を獲得してみごと最優秀賞に選ばれました。

最優秀賞 半田千尋 接地性のある建築 〜気配でつなぐ多層サテライトキャンパス〜

半田案は木造密集地を例として、高密度ならではの生活音や他人との近さを
大事なコミュニケーションと位置づけ、またそれは路地空間がもつ折れ曲がりや幅員の狭さといったものが要因となって生まれていると判断し、「見えないけれど感じる」といった関係性を、分野間で垣根を無くしたサテライトキャンパスへと転用させた。アクセスのし易さから青山という敷地が選定されているため建物は必然的に多層となってしまうが、
横のつながりが重用しされる密集ブロック(木密調査で培った路地空間を応用した見えないけれど感じるようなプランニングが施されている。)を接続するため青山の都市的風景を望むべく透明化された開放空間でサンドイッチ化するといった有りそうで無かった構成システムが評価を得た。

続いて優秀賞2点の選出でしたが、複数票を獲得した以下の3作品での銀1票、銅1票を投じる決戦投票が行われました。
山中 健裕 0(ゼロ)-恢復の布石  〜こどもと育む、「場」の創発的石巻再生デザイン〜が銀2票
三木 友親 町工場を町に近づける 〜西淀川を作り直すまち工場路地〜が金1票、銀1票
野川 栞里 長岡駅前大雁木広場 ~大手通り商店街おもてなし生産拠点化計画~が銀3票

結果は
野川 栞里 長岡駅前大雁木広場 ~大手通り商店街おもてなし生産拠点化計画~が銀2票、銅1票を獲得し優秀賞に選出され、
三木 友親 町工場を町に近づける 〜西淀川を作り直すまち工場路地〜が銀2票を獲得し優秀賞に選出されました。

優秀賞 野川栞里 長岡駅前大雁木広場 ~大手通り商店街おもてなし生産拠点化計画~

野川案は車社会の進展により郊外型の商業に場を奪われた長岡駅前商店街の再構築を計画した。商業が衰退し必要の無くなった巨大なアーケードを取払い、古くから新潟県の商店街に見られる雪よけのための雁木造に着目、基調とした大屋根を掛け直すという提案である。完成形へのイメージが作品中最も強く、至る所にまで考慮されおり、雁木という古来の建築様式を用いた点も好評であったが、アイレベルでの表現が足りないため屋根架構の起伏によって生まれている内部空間の豊かさや降り積もった雪との関係性が伝わらなかった点が惜しい印象であった。

優秀賞 三木友親 町工場を町に近づける 〜西淀川を作り直すまち工場路地〜

三木案は西淀川区の町工場地の宅地化に抵抗する計画。近年の工場跡地の宅地開発によってかつて職住一体となった活気のある町の風景は失われつつある。町には新規居住者が流入し、本来まちのアイデンティティであった町工場が嫌悪施設となり下がってしまった現状を廃工場の公共空間への転換で食い止め、彼が計画した5つのゾーン軸として町工場の風景を残しつつ町を再編していくといった魅力ある提案であったが、新旧の入れ子構造という手垢のついた構成や軸となるべく装置としてのブリッジが建築化されていない点がマイナス評価となってしまった。また工場と住宅(街)との境界面に、より着目したアプローチの方がテーマ設定と建築がよりリンクしたのではなかろうかといった意見も見受けられた。

山中健裕 0(ゼロ)-恢復の布石  〜こどもと育む、「場」の創発的石巻再生デザイン〜

惜しくも落選となってしまった山中案は、東日本大震災によって甚大な被害をうけた宮城県石巻市の門脇地区を敷地に、災害の記憶を継承する場の提案として次代を担う子供を中心とした施設の提案であった。だれもが苦い経験から顔を背けがちな事柄を唯一卒業設計のテーマに選んだ姿勢は評価したかったのだが、他の作品に比べ、建築的色気が足りなかったように思われる。
作者自身が最も力を注いだ避難経路を可視化するといったテーマをより建築デザインに導くことができたはずであり、例えば避難場所となりえる日和山の稜線を取り入れることでより避難先を暗示させる可能性があったことや高盛土道路を仮想GLと定義した点は認めるがそのあまりにもフラットすぎるデザインはテーマとのズレを感じてしまうといった点において色気の無さが表出してしまったのが残念な秀作であった。

東海大学建築会卒業設計賞 最優秀賞の半田 千尋さん
東海大学建築会卒業設計賞  優秀賞の野川 栞里さん
東海大学建築会卒業設計賞  優秀賞の三木 友親さん 
受賞おめでとうございます。

受賞者と審査員

最後に31作品の読み込みから始まり、最優秀賞、優秀賞の3作品選出のためおよそ7時間にも及ぶ長丁場にも関わらず、参加してくれた学生、影で支えてくれた後輩学生、なによりもお忙しいなか後輩のために審査をして頂けた審査員の皆様にはこの場をお借りして感謝の意を表します。    

理事会員 森 昌樹(93年度卒)


以下より審査表のPDFをダウンロード頂けます。

審査表
http://www.tokai-arch.org/news/kd14hyou.pdf


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background image: 湘南キャンパス H棟 Photograph: © GEN INOUE 23rd June, 2012